マエアカスカシノメイガ Palpita nigropunctalis
(ツトガ科ヒゲナガノメイガ亜科)

夏の暑さが過ぎ、本格的な秋の訪れを感じはじめる9月の早朝に、アベリアの花を訪れたマエアカスカシノメイガを見つけた。

半透明の白い翅と橙色の差し色が美しいガで、早春のまだ寒い時期から灯火やコンビニの灯りに成虫が集まる。幼虫が公園の生け垣や人家に植栽されるネズミモチやライラック、オリーブなど様々なモクセイ科植物を餌としているため、都市から山間部まで広い地域で成虫を目にする。

本種の成虫は真冬以外いつでも見られるような気がするのだが、実は複雑な生活史を持っており、成虫が見られる時期は意外に限られている。幼虫が暑さにも寒さにも弱いのか、あるいは春と秋だけ餌の状態がよいのか、幼虫の生育に適さない時期を休眠してやり過ごすようだ。夏は成虫で、冬は蛹でそれぞれ休眠するらしい(Gotoh et al. 2011, 後藤 2012)。

撮影データ: 2022年9月23日 鳥取県鳥取市
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

日本産チョウ類の衰亡と保護<第8集>

2022年12月19日公開

基本情報

書誌名:
日本産チョウ類の衰亡と保護<第8集>
著者・編者:
平井 規央・森地 重博・矢後 勝也・神保 宇嗣(日本鱗翅学会)
出版日:
2022年10月31日
出版社:
大阪公立大学出版会
総ページ数:
470
ISBN:
978-4909933416
定価:
4,400円 (税抜)

日本におけるチョウ・ガ類の生息状況や実践的な保護活動の事例、都道府県別レッドリストなどをまとめた「日本産チョウ類の衰亡と保護」第8集が刊行されましたのでご案内いたします。チョウ・ガ類の保全に関する事例研究13編と全47都道府県からのチョウ類レッドリストを掲載しております。

日本産チョウ類の衰亡と保護<第8集>

編者:
平井 規央・森地 重博・矢後 勝也・神保 宇嗣(日本鱗翅学会)
体裁:
A4判|並製本|470頁
定価:
4,400円 (本体価格4,000円+税10%)
ISBN:
978-4-909933-41-6 C3045

本書をご希望の方は、大阪公立大学出版会(OMUP)へ直接お申込みいただくか、お近くの書店へお申込みください。アマゾン、楽天ブックスなどのネット書店で注文することもできます。


日本鱗翅学会は、自然保護委員会を設置し、環境指標として有用なチョウ・ガ類の推移を見つめながら、科学的知見を蓄積した専門家集団として各種の自然保護活動に取り組んでいます。本委員会ではシンポジウムや小集会を毎年開催しているほか、日本におけるチョウ・ガ類の生息状況や実践的な保護活動の事例、都道府県別レッドリストなどをまとめた「日本産チョウ類の衰亡と保護」を発行し、日本の生物多様性保全を検討する上での重要な指針を提示してきました。シリーズ第8集となる本書は、2019年3月に開催された「第10回自然保護セミナー」の内容をもとに編集されたもので、このセミナーのサブテーマは、「チョウ類の永続的保護に向けて」というものでした。今回もチョウ・ガ類の保全に関する事例研究13編と全47都道府県からの科学的根拠に基づいたチョウ類レッドリストを集積することができました。これらのデータが各地での保全活動やレッドリストの改訂にも活かされることを期待しています。

目次

第1部 日本産チョウ類の保全と現状と展望

  • ・日本産チョウ類の現状と課題ー日本鱗翅学会自然保護委員会の活動を中心に
  • ・北海道におけるアサマシジミの保全活動
  • ・北海道アポイ岳のヒメチャマダラセセリの生息現状と保護活動
  • ・群馬県におけるミヤマシロチョウの生息数調査と保全・大阪国際空港周辺のシルビアシジミ
  • ・オオルリシジミが繋ぐ研究活動と社会貢献
  • ・京都府小塩山におけるギフチョウの保全活動
  • ・広島県のヒョウモンモドキ保護活動20年間成果と課題
  • ・絶滅危惧種カバシタムクゲエダシャクの再発見と生態解明: 本種の保全に向けて
  • ・オープンランドにおけるガ類の現状把握と今後の展望
  • ・アリがいなければチョウは守れない?
  • ・アリに寄り添う奇妙なガ類
  • ・保全のシンボルとしての「都道府県のチョウ」の選定の試み

第2部 日本鱗翅学会版都道府県別日本産チョウ類レッドリスト


問い合わせ先

〒599-8531

大阪府堺市中区学園町 1-1

大阪公立大学大学院 農学研究科
緑地環境科学専攻 環境動物昆虫学研究グループ

平井 規央

TEL:072-254-9413
FAX:072-254-9694
E-mail:hiraiomu.ac.jp

平井 規央

日本鱗翅学会

〒113-0001
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アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。