モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

日本鱗翅学会の歴史

昭和20年(1945)
9月1日 創立(京都)
昭和24年(1949)
11月30日 会誌『蝶と蛾』発行
昭和30年(1955)
5月15日 第2会誌『やどりが』発行
昭和36年(1961)
台湾調査隊派遣。以降、ヒマラヤ蝶蛾調査隊派遣[昭和38年(1963)]、東南アジア蝶蛾調査隊(マレーシア)派遣[昭和39年(1964)]、台湾蝶類生態調査隊派遣[昭和40年(1965)]
昭和46年(1971)
創立25周年記念論文集発行
昭和63年(1988)
『蝶類学の最近の進歩』白水隆名誉会長記念論文発行
平成元年(1989)
『日本産蝶類の衰亡と保護 第1集(やどりが特別号)』発行。以降、現在までに第5集発行済。
平成2年(1990)
第1回日本鱗翅学会セミナー「蝶類の保護・・・自然保護の一環として」を大阪市で開催。以降、浦和市・松本市・仙台市・鹿児島市にて平成6年(1994)まで合計5回開催。
平成6年(1994)
日本鱗翅学会50周年国際シンポジウムを大阪府立大学で開催。
平成7年(1995)
自然史学会連合に加盟。
平成8年(1996)
ギフチョウフォーラムを岐阜市長良川国際会議場で開催。
平成11年(1999)
日本鱗翅学会アサギマダラプロジェクト発足。
自然保護委員会による第一回「チョウとガ」フォトコンテスト開催、以来4回にわたって実施。
平成14年(2002)
日本鱗翅学会公式ウェブサイトの公開。
平成17年(2005)
アサギマダラ・プロジェクト・国際シンポジウムの開催。
平成22年(2010)
日本昆虫科学連合発足、本学会も加盟。
平成24年(2012)
東北支部設立総会の開催。
平成30年(2018)
『蝶と蛾』誌の完全電子化を実施。
ウェブサイトのリニューアル公開。

参考リンク

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鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。