モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中　秀司

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日本鱗翅学会

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蝶と蛾 76(4)(電子版)発行のお知らせ

2025年10月27日公開

蝶と蛾 Vol.76 No.4 (電子版)が発行されましたのでお知らせします。閲覧には以下、J-StageのURLにアクセスし、やどりが283に同封されていたログイン名とパスワードを入力してください。

ログイン名とパスワードは、2025年3月31日までは旧パスワード、2025年4月1日からは新パスワードをご使用ください。ログイン名とパスワードが分からない場合は、学会事務局にお問い合わせください。


蝶と蛾 Vol. 76 No. 4

    • A new subspecies of Cigaritis (Spindasis) vulcanus Fabricius, 1775 (Lepidoptera: Lycaenidae) from Sulawesi, Indonesia
    • Seiichi SUEFUJI, Kotaro SAITO
    • インドネシア, スラウェシ産Cigaritis (Spindasis) vulcanusの1新亜種
    • 末藤 清一, 齊藤 光太郎
    • ページ: 151-155
    • DOI: https://doi.org/10.18984/lepid.76.4_151
    • Protandry as an adaptive trait in the two Theclini species (Lepidoptera: Lycaenidae)
    • Tsuyoshi TAKEUCHI T
    • 適応形質としてのミドリシジミ族の雄性先熟
    • 竹内　剛
    • ページ: 157-162
    • DOI: https://doi.org/10.18984/lepid.76.4_157
    • The first record of Thecobathra heppneri Sohn, 2018 (Lepidoptera: Yponomeutidae) from Japan
    • Taiyo OKA, Sadahisa YAGI
    • Thecobathra heppneri Sohn, 2018 (チョウ目: スガ科)の日本からの初記録
    • 岡　太陽, 屋宜 禎央
    • ページ: 163-167
    • DOI: https://doi.org/10.18984/lepid.76.4_163
    • A New Record of the Butterfly Species, Purple Emperor, Apatura iris (Linnaeus, 1758), (Lepidoptera: Nymphalidae, Apaturinae) in Mongolia
    • Shigeru MINOHARA, Akio TAMURA, Mikio OHKI, Baljinnyam OTGONBAYAR, Baljinnyam BATZORIG
    • イリスコムラサキApatura iris (Linnaeus, 1758)のモンゴルからの初記録
    • 蓑原　茂, 田村 昭夫, 大木 幹夫, OTGONBAYAR Baljinnyam, BATZORIG Baljinnyam
    • ページ: 169-172
    • DOI: https://doi.org/10.18984/lepid.76.4_169
新記録ノート｜Note on New Record
    • Discovery of Coleophora limoniella Stainton, 1884 (Lepidoptera, Coleophoridae) from Japan
    • Takeshi TERADA
    • マキエツツミノガ(新称)(チョウ目, ツツミノガ科)の日本からの発見
    • 寺田　剛
    • ページ: 173-174
    • DOI: https://doi.org/10.18984/lepid.76.4_173
生態記録｜Note on Biology
    • Head capsule width of larvae of Curetis acuta paracura de Niceville (Lepidoptera, Lycaenidae) in Kanto, Central Japan
    • Takenari INOUE
    • 関東地方産ウラギンシジミの幼虫の頭幅
    • 井上 大成
    • ページ: 175-177
    • DOI: https://doi.org/10.18984/lepid.76.4_175
    • Geographical variation of Eupoecilia kobeana Razowski, 1968 (Lepidoptera: Tortricidae: Tortricinae) with ecological notes and new distributional records in Japan
    • Shinya SUZUKI, Utsugi JINBO, Sadahisa YAGI, Toshiya HIROWATARI
    • 八重山諸島におけるアカオビホソハマキ(チョウ目: ハマキガ科: ハマキガ亜科)の地理的変異及び日本における生態記録と新分布記録
    • 鈴木 信也, 神保 宇嗣, 屋宜 禎央, 広渡 俊哉
    • ページ: 179-187
    • DOI: https://doi.org/10.18984/lepid.76.4_179
    • Discovery of Ostrinia sanguinealis (Lepidoptera, Crambidae), feeding on Saururus chinensis (Saururaceae), in Kyoto, Japan, and its phylogenetic position within the genus Ostrinia
    • Yutaka YOSHIYASU, Tsuguo KAWAI, Issei OHSHIMA
    • 京都でハンゲショウ(ドクダミ科)を寄主としていたアカノメイガOstrinia sanguinealisの発見及びアワノメイガ属における本種の系統的位置(鱗翅目, ツトガ科)
    • 吉安　裕, 河合 嗣生, 大島 一正
    • ページ: 189-203
    • DOI: https://doi.org/10.18984/lepid.76.4_189

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鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。