モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

第15回日本昆虫科学連合・日本学術会議共催シンポジウム開催のお知らせ

2025年5月15日公開

第15回日本昆虫科学連合・日本学術会議共催シンポジウムを下記のとおり開催いたします。

本シンポジウムでは大盛況に終わった国際昆虫学会議(ICE2024 KYOTO)の報告を通じて日本の昆虫科学の力をみなさんに知っていただくとともに、第一線で活躍する5名の研究者から昆虫科学のおもしろいお話を提供していただきます。

現在と未来の昆虫科学者、そして虫好きにぜひ聞いてほしい内容になっておりますので、奮ってご参加ください。

また、興味のありそうな周囲のみなさんも、このお知らせを転送することでお誘いください。


シンポジウム開催日時:
6/28(土) 13時~
タイトル:
「昆虫科学はおもしろい~国際昆虫学会議を終えて未来の昆虫科学者たちへ~」
開催方法:
Zoomウェビナー
参加費:
無料
定員:
1,000名
※ 前日までの事前参加登録が必要です。

日本昆虫科学連合
役員および運営委員一同
お問い合わせ: contactinsect-sciences2.sakura.ne.jp

坂巻 祥孝 (日本昆虫科学連合連絡担当理事)

日本鱗翅学会

〒113-0001
東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。