モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

日本鱗翅学会 チョウとガ フォトコンテスト2024【結果発表】

2025年3月20日公開

「日本鱗翅学会 チョウとガ フォトコンテスト2024」として、会員外も含めた皆様から「チョウとガの不思議な生態」をテーマとした写真を公募いたしましたが、全国から一般の部に32作品、学生の部に7作品のご応募を頂きました。誠に有難うございました。

プロ写真家による審査により、ご応募いただいた39作品の中から、「一般の部」と「学生の部」の2部門で、次のとおり入賞者を決定いたしました。全体の作品数は前年より増加し、審査員の先生からは「今年もレベルが高かった」との評を頂いております通り、皆様が苦労して撮られた素晴らしい作品が揃いました。

なお、入賞作品は、今後日本鱗翅学会ウェブサイトおよび日本鱗翅学会会誌「やどりが」誌上で発表させて頂きました。

2025/3/19 日本鱗翅学会フォトコンテスト事務局

入賞作品

一般の部

特選
齋藤 大郎 『スジグロカバマダラの黒化異常個体型』
吉村 久貴 『蜂雀の衝突回避』
準特選
岸村 高洋 『ルビーの雫』
立岩 幸雄 『ギフチョウの舞踏会』
平井 規央 『イケマにトラップされたヒメキマダラヒカゲ』
山本 卓司 『断固拒否!!』
入選
稲谷 康行 『交尾中のオオゴマシジミ』
佐藤 伸一 『産卵した卵を守る母蝶』
鈴木 とき子 『ミヤマモンキチョウの産卵』
中本 満康 『仲良く吸蜜』
福元 みつ子 『ウスキヌガサダケから離れないイシガケチョウ』
不破 崇公 『残暑』
安川 憲 『リュウキュウアサギマダラの生態』

学生の部

グランプリ
福田 琳之介『ヒメシロチョウの求愛』
入選
篠田 奈菜子 『とても美しいジャコウアゲハの世界』
久井 花恋 『オオムラサキの不器用な擬態』
山本 真那 『世界に一つだけの花』

※ 掲載はアイウエオ順です

入賞作品はこちらからご覧下さい。

日本鱗翅学会

〒113-0001
東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。