モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

閉じる

日本鱗翅学会

日本鱗翅学会東海支部2024年度総会及び第186回例会のご案内

2025年2月 8日公開

下記の要領で、日本鱗翅学会東海支部2024年度総会及び第186回例会を開催いたします。奮ってご参加ください。

会場・日時

会場:
名城大学共通棟北館 N-104教室
名城大学天白キャンパスへのアクセス
日時:
2025年2月15日(土) 13:00~17:00

演題: LSJ選定「保全のシンボルとしての都道府県のチョウ」についてのミニシンポジウム

はじめに:
江田 信豊「都道府県のチョウ選定とその理由 東海4県について」
岐阜県 [ギフチョウ]:
鈴木 俊文「高山市清見町におけるギフチョウの保全活動について」
愛知県 [ヒメヒカゲ]:
間野 隆裕「愛知県のヒメヒカゲ」
三重県 [キリシマミドリシジミ]:
河本 実「三重県のキリシマミドリシジミについて」
静岡県 [フジミドリシジミ]:
諏訪 哲夫「静岡県におけるフジミドリシジミの生息状況」

問い合わせ先

江田 信豊(日本鱗翅学会東海支部)

E-mail:koda6483gmail.com

江田 信豊 (東海支部)

日本鱗翅学会

〒113-0001
東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。