モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

日本鱗翅学会近畿支部第169回例会・関⻄昆虫学研究会2024年度大会のご案内

2024年11月27日公開

以下の日程で、近畿支部第169回例会を、関西昆虫学研究会と合同で開催します。どなたでも参加できますので、ご興味があればご参加ください。

日時・会場

日時:
2024年12月7日(土) 13:55~16:45(13:45受付開始)
会場:
大阪公立大学 I-siteなんば (2FカンファレンスルームC2+C3)
会場へのアクセス

プログラム

13:45
受付開始(発表者はスライド等の確認)
13:55~14:00
開会挨拶
14:00~16:40
研究発表(口頭発表)
1. 中央アルプスで採集された未知のEpinotia属(ハマキガ科)
那須 義次 (近畿支部)
2. カザフスタンの天山山脈のチョウ
竹内 剛 (近畿支部)
3. 地中での捕食被食関係: ツチバチ類とハナムグリ幼虫の攻防
浦野 航平・杉浦 真治 (神戸大・院・農)
4. スズメバチ科寄生性ハチタケの子実体形態観察と分子系統解析
若林 悠太・嶋崎 拓・高橋 純一 (京都産業大・生命科学)
5. 寄生蜂キョウソヤドリコバチの母性休眠誘導におけるJHシグナル伝達経路の機能解析
池田 類1・西矢 芳昭1・向井 歩2 (1摂南大・院・理工・2大阪公立大・院・理)

休憩・交流

6. 寄生されたアリ随伴性シジミチョウ幼虫の行動変化が寄生蜂幼虫の生存率に与える影響
門田 悠里1・中林 ゆい2・大島 一正1,3,4 (1京都府大・生命環境・2神戸大・院・農・3京都府大・新自然史科学創生センター・4京都府立植物園)
7. クルミホソガのクルミレースに対して産卵刺激効果をもつ寄主化学成分抽出物の抽出法の開発
田房 由伎1・近藤 陽香2・小野 肇2・大島 一正3,4,5 (1京都府大・生命環境・2京都大・農・3京都府大・院・生命環境・4京都府大・新自然史科学創生センター・5京都府立植物園)
8. 日本産個体を用いたアワノメイガおよびその近縁種間での系統関係と集団構造
濵村 和1・吉安 裕2・大島 一正2,3,4 (1京都府大・生命環境・2京都府大・院・生命環境・3京都府大・新自然史科学創成センター・4京都府立植物園)
9. 左右非対称の交尾器を持つルリクワガタ属のオスは左右のどちらか一方向から交尾するのか?
横川 忠司 (生きもの科学研究所)
16:40~
若手発表賞授賞式
16:45
閉会

問い合わせ先

〒599-8531

大阪府堺市中区学園町 1-1

大阪公立大学大学院農学研究科
環境動物昆虫学研究グループ

竹内 剛(日本鱗翅学会近畿支部)

TEL:072-254-9413
E-mail:u21162homu.ac.jp

竹内 剛 (近畿支部)

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鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。