モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

日本鱗翅学会 チョウとガ フォトコンテスト2024

2024年8月 9日公開

「ちょうちょ、ちょうちょ、菜の葉にとまれ」と童謡にも歌われているチョウやガの仲間は、私たちにとってはとても身近な存在ですが、近年その姿を見る機会が減ってきています。実は、チョウやガの仲間は身近な自然のバロメーターで、私たちの住む場所の自然の変化を反映しているといえます。

日本鱗翅学会では、チョウやガ(鱗翅類)の魅力やその変化を科学的に探るとともに、それを私たちの住む場所や周辺の環境を守ることにつなげる活動を行っています。その一環としてチョウやガの魅力を再発見していただくとともに、身近な自然の変化を知る糸口にしていただこうと、広く一般の方々を対象にチョウとガのフォトコンテストを開催しておりますが、今年は次のテーマで作品を公募いたします。撮影中に思わずシャッターを押してしまったり、撮影後のチェックで気づかされたりした、チョウやガたちが見せた意外な行動などについて、たくさんの方々のご応募をお待ちしております。

フォトコンテスト2024について|応募要領など

テーマ
「チョウやガたちが見せた驚きの瞬間」
部門
一般の部|学生の部
グランプリ(1作品: 両部門を通じて最高評価の作品) 副賞: 3万円のギフトカード
特選(各部門2作品以内) 副賞: 1万円のギフトカード
準特選(各部門5作品以内) 副賞: 5千円のギフトカード
入選(各部門10作品以内) 副賞: 1千円のギフトカード
募集期間
2024年8月1日~9月20日(締め切り: 当日消印有効)
選考方法
日本鱗翅学会役員及び評議員(応募者を除く)による一次審査で各部門上位20作品を選出し、プロの写真家(海野和男氏)による最終審査で入賞作品を決定

審査員紹介

海野 和男氏

1947年東京生まれ。昆虫を中心とするフリーの自然写真家。日本自然科学写真協会会長。学生時代よりアジアやアメリカの熱帯雨林に通い、昆虫の擬態を中心に写真を撮り続ける。現在は、アトリエのある長野県小諸市に、じっくりと腰を据えて身近な自然を記録している。主な著書に『蝶の飛ぶ風景 Butterflies』(平凡社)、『昆虫の世界へようこそ』(ちくま新書)、『昆虫顔面図鑑』(実業之日本社)、『海野和男の昆虫撮影テクニック』、『世界で一番美しい蝶図鑑』(誠文堂新光社)など多数。

応募方法

  • 1) 日本在住のプロ以外の方なら誰でも応募できます。各自が日本国内で撮影した単写真か組写真のいずれかを1作品として一人1点の応募とします。なお学生の場合は一般の部・学生の部へそれぞれ別作品を1点ずつ応募することが可能です。応募作品の撮影時期に制限はございません。
  • 2) 応募用紙に必要事項を記入し、応募作品(5MB以下のJPEGファイル)とともにメールに添付して下記まで送るか、応募用紙と応募作品をデータとしてDVD-RやSDカード等に入れて下記宛に郵送して下さい(プリントしたものは入れないで下さい)。応募用紙をプリントして手書きで記入の上、応募作品の入ったDVD-RやSDカード等と一緒に郵送することもできます
  • なお、応募作品や応募に使用した電子媒体は返却いたしませんので、複製を保存してからご応募下さい。
  • 3) 入賞作品は、日本鱗翅学会のウェブサイトで発表する(2024年12月末予定)とともに、入賞者には別途郵送にてお知らせいたします(都合によりスケジュールを変更する場合もあります)。

応募作品について

  • 1) 応募作品は、所属同好会会誌などへの掲載を除き未発表または発表予定のないものに限りますが、他のコンテストへの二重応募(入賞・入選しなかった作品は応募可)または類似作品とみなされる作品は失格となります。
  • 2) 応募作品に人物が写り込んでいる場合には、ご応募に際して、必ず本人(被写体: 未成年の場合は親権者)の承諾をいただいて下さい。
  • 3) 入賞作品につきましては、入賞のお知らせの後に原版の提出をお願いする場合がございます。
  • 4) 応募作品の著作権は撮影者に帰属しますが、日本鱗翅学会は入賞作品を無償で使用する権利を有することとします。入賞作品は主に次の目的で使用します。日本鱗翅学会の出版物、またはウェブコンテンツとしての二次利用など。

メールでの応募

日本鱗翅学会フォトコンテスト公募メールアドレス

E-mail:lsj-photolepi-jp.org

※ 件名に「フォトコンテスト応募作品(氏名)」を明記

郵送

〒192-0364

東京都八王子市南大沢 2-214-6-103

藤塚 弘 方

日本鱗翅学会フォトコンテスト 事務局

日本鱗翅学会

〒113-0001
東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。