モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

日本鱗翅学会近畿支部第168回例会のご案内

2024年5月 5日公開

下記の要領で、日本鱗翅学会近畿支部第168回例会を開催いたします。奮ってご参加ください。

会場・日時

会場:
I-siteなんば(大阪公立大学)2F C1室
会場へのアクセス
日時:
2024年5月11日(土) 13:50~17時頃

プログラム

1. 屋久島のルーミスシジミを追って
有田 斉(近畿)
2. 壱岐島の小蛾類
那須 義次(近畿)・上田 達也(近畿)・小林 真大(日本蛾類学会)
3. ヤママユの系統継代飼育とバージンメスを使った生息分布調査方法
寺本 憲之(滋賀県大/琵琶湖博)
4. コツバメの飼育報告
長井 丈(神戸市立井吹東小学校)
5. 大阪府枚方市のチョウ類群集の変化 -1989年と2023年との比較-
棚橋 一郎(枚方生きもの調査会)
6. ヒサマツミドリシジミ雌雄の交尾戦略
大東 康人(近畿)
7. 春のチョウを求めてジブラルタル海峡を渡ってモロッコへ
竹内 剛(近畿)

※ 支部例会終了後に、会場周辺で懇親会を予定しています。

問い合わせ先

〒599-8531

大阪府堺市中区学園町 1-1

大阪公立大学大学院農学研究科
環境動物昆虫学研究グループ

竹内 剛(日本鱗翅学会近畿支部)

TEL:072-254-9413
E-mail:u21162homu.ac.jp

竹内 剛 (近畿支部)

日本鱗翅学会

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東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
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鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。