ヒメクロオビフユナミシャク Operophtera crispifascia
(シャクガ科ナミシャク亜科)

寒冷期に活動するシャクガの仲間、いわゆる冬尺蛾のひとつ。山深いブナ林に生息する。木々の葉が黄色く色付きそして落葉する直前のひと時に限って出現し、同所的に見られる他の冬尺蛾よりも出現時期はやや早い。

冬尺蛾のメスはいずれも翅が縮小あるいは消失しており飛翔能力を持たないが、その中にあって本種のメスは相対的にかなり大きな翅をもつ。オスは低地~山地でよく見られるクロオビフユナミシャクに似る。しかし触角の櫛歯は本種の方がはるかに長く、識別は容易。

ブナの幹に本種のメスがとまっていると、中途半端な大きさの翅が幹表面に接して周囲に馴染み、小さなコブのように見える。コーリング(雌性フェロモンの放出)は午後7時頃に行われ、その時間帯には多数のオスがブナ林内を飛び交う。

撮影データ: 2015年10月17日 八甲田山(青森県)
撮影・文章: 工藤 誠也

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日本鱗翅学会

日本鱗翅学会 チョウとガ フォトコンテスト2023【結果発表】

2024年2月28日公開

「日本鱗翅学会 チョウとガ フォトコンテスト2023」として、会員外も含めた皆様から「チョウとガの不思議な生態」をテーマとした写真を公募いたしましたが、全国から一般の部に25作品、学生の部に10作品のご応募を頂きました。誠に有難うございました。

プロ写真家による審査により、ご応募いただいた35作品の中から、「一般の部」と「学生の部」の2部門で、次のとおり入賞者を決定いたしました。全体の作品数は前年より減少したものの、審査員の先生からは「今年はレベルが高かった」との評を頂いております通り、皆様が苦労して撮られた素晴らしい作品が揃いました。なお、一般の部特選の真田豊誠氏が2023年10月31日に、学生の部特選の橋本敦己さんが2023年12月18日に、それぞれ急逝されたとの訃報を頂きました。今回応募いただいた作品がお二人の遺作でもあります。お二人がこれらの作品に込められた思いを、会員の皆様にも感じていただき、お二人のご冥福を心よりお祈りいたしたいと思います。

今年も、チョウとガ フォトコンテスト2024を開催予定ですので、さらに多くの方々からのご応募を期待いたします。

なお、入賞作品は、今後日本鱗翅学会ウェブサイトおよび日本鱗翅学会会誌「やどりが」誌上で発表させて頂く予定です。

2024/2/28 日本鱗翅学会フォトコンテスト事務局

入賞作品

一般の部

グランプリ
鶴藤 俊和『タカネキマダラセセリの卍飛翔』
特選
真田 豊誠 『ウラギンヒョモンとクモガタヒョウモンの衝突』
髙﨑 明 『フタオチョウとオキナワカラスアゲハ』
準特選
岸村 高洋 『山のギンイチモンジセセリ』
佐藤 伸一 『コヒョウモンモドキのお見合い』
竹内 剛 『Favoniusの繁殖干渉』
蓑原 茂 『ハンマースネーク触るべからず』
吉村 久貴 『潮風の中で』
入選
小林 茂樹 『紅をさす』
保坂 満 『次世代につなぐ産卵』
前田 敏 『我が家の庭のジャコウアゲハ』
南 尊演 『ナミアゲハ雄・雌』
安川 憲 『交尾するアサギマダラ』

学生の部

特選
橋本 敦己 『共存社会』
準特選
川島 府久 『汗ちょうだい!』
久井 花恋 『アイノミドリシジミの卍巴飛翔』
土居 咲貴 『風に耐えるタイワンヒメシジミとタヌキコマツナギ』
入選
末兼いこい 『ちょうちょのおにごっこ』
末兼 柊仁 『浅黄色の来客』
仁地 悠人 『交尾するヒメヒカゲ』
渡邉 卓実 『肥後は魅た』

※ 掲載はアイウエオ順です

入賞作品はこちらからご覧下さい。

日本鱗翅学会

〒113-0001
東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。