ヒメクロオビフユナミシャク Operophtera crispifascia
(シャクガ科ナミシャク亜科)

寒冷期に活動するシャクガの仲間、いわゆる冬尺蛾のひとつ。山深いブナ林に生息する。木々の葉が黄色く色付きそして落葉する直前のひと時に限って出現し、同所的に見られる他の冬尺蛾よりも出現時期はやや早い。

冬尺蛾のメスはいずれも翅が縮小あるいは消失しており飛翔能力を持たないが、その中にあって本種のメスは相対的にかなり大きな翅をもつ。オスは低地~山地でよく見られるクロオビフユナミシャクに似る。しかし触角の櫛歯は本種の方がはるかに長く、識別は容易。

ブナの幹に本種のメスがとまっていると、中途半端な大きさの翅が幹表面に接して周囲に馴染み、小さなコブのように見える。コーリング(雌性フェロモンの放出)は午後7時頃に行われ、その時間帯には多数のオスがブナ林内を飛び交う。

撮影データ: 2015年10月17日 八甲田山(青森県)
撮影・文章: 工藤 誠也

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日本鱗翅学会

東海支部2023年総会及び第184回例会のご案内

2023年11月 4日公開

日本鱗翅学会東海支部では、2023年総会及び第184回例会として次のような講演会を開催します。

特別講演者の土田教授は、各種ハチ類やアリなど社会性昆虫の研究の他、Luehdorfia属(ギフチョウ属)、カノコガ、スカシバガ、ウスバアゲハなどの鱗翅類も対象として、色彩と分布に関する研究、昆虫社会性の研究、フェロモンなどの行動に関する研究など、その分野も多岐にわたっております。

本年、全国のLuehdorfia属(ギフチョウとヒメギフチョウ)の標本をもとに、ミトコンドリアDNAとSNP(一塩基多型)を解析し、日本列島における2種の分布拡大過程を追跡し、また宿主植物を交換した摂食実験を行い、ギフチョウの宿主植物の地域適応を検証、分析されました。全国的な視点から、いくつかの遺伝的集団があることや、分布拡大の年代推定、寄主植物への適応過程など、大変興味深い内容を含みます。

また、東海4県のギフチョウに関することが網羅された今までにない講演会となります。

加えて、演者を囲んで、会場の皆さまとギフチョウに関するミニシンポジウムもする予定です。

どなたでも参加自由ですので、ご興味のおありの方の参加をお待ちしております。

日時
2023年12月2日(土) 13:00~17:00
場所
名城大学共通講義棟北館 N-104講義室
〒468-8502 名古屋市天白区塩釜口 1-501
名古屋地下鉄鶴舞線 塩釜口1番出口徒歩5分
共通講義棟北館へのアクセス
参加費
500円

プログラム

13:00-13:20 総会
13:30-14:30 特別講演
「DNAの変異から読み解く生物の歴史: 見えてきたギフチョウの分布拡大過程と適応の歴史」
岐阜大学応用生物学部教授 土田 浩治 博士(昆虫生態学研究室)
14:40-16:00 一般講演
杉坂 美典「愛知県におけるギフチョウの分布状況と地理的変異,岡崎市産ギフチョウの発生状況について」
中西 元男「三重県のギフチョウ・昔と今」
水谷 治雄「岐阜県のLuehdorfia今と昔」
諏訪 哲夫「静岡県におけるギフチョウの生息状況と保全」
16:00-16:50 ギフチョウミニシンポジウム
ギフチョウについて、演者と会場の皆さまによる総合討論を行います。

内容に関する問合先: 間野隆裕 manotaka6458gmail.com

間野 隆裕 (東海支部)

日本鱗翅学会

〒113-0001
東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。