モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

日本鱗翅学会 チョウとガ フォトコンテスト2022【結果発表】

2023年1月17日公開

「日本鱗翅学会 チョウとガ フォトコンテスト2022」として、会員外も含めた皆様から「チョウとガの不思議な世界」をテーマとした写真を公募いたしましたが、全国から一般の部に47作品(組写真も含む全54点)、学生の部に10作品のご応募を頂きました。誠に有難うございました。

プロ写真家2名による一次審査で一般の部を上位20作品に絞らせて頂き、二次審査では日本鱗翅学会の理事・評議員の21名の方々にも審査して頂き、その評価点も加味して総合的に入賞者を選考させて頂きました。 このような審査により、ご応募頂いた57作品の中から、「一般の部」と「学生の部」の2部門で、一覧表のとおり入賞者を決定いたしました。

今年も、チョウとガ フォトコンテスト2023を開催予定ですので、今回入賞された方や残念ながら入賞されなかった方々も含め、さらに多くの方々からのご応募を期待いたします。

なお、入賞作品は、今後日本鱗翅学会ウェブサイトおよび日本鱗翅学会会誌「やどりが」誌上で発表させて頂く予定です。

2023/1/17 日本鱗翅学会フォトコンテスト事務局

入賞作品

一般の部

グランプリ
佐藤 伸一『アリと共に生きる』
特選
西嶋 信夫『フチグロトゲエダシャク雄飛来』
成田 徹『卍どもえ飛翔』
準特選
藤本 徹哉『緋縅の春』
後藤 仁『おしっこ』
松田 陽二『晩夏の営み』
山本 卓司『コロナ禍の「密」』
入選
熊田 聖三『肖像写真 蝶と蛾』
太田 明男『アゲハの吸水行動~放水の瞬間(5枚組写真)』
玉嶋 勝範『アリの巣から脱出したクロシジミの運命』
青木 稔『スケカバマダラ』
長谷川 匠『雪に咲く燻銀の華』
小田桐 啓太『スギタニルリシジミの春』
川田 澄男『手はオシッコだらけ』
立岩 幸雄『沖縄の青い空と海を背景に占有行動中のフタオチョウ♂』

学生の部

特選
西 雅刀『クリとキマルリ』
準特選
白井 建『アサマイチモンジの交尾』
関 理紗『どこまでも遠くへ』
入選
清水 美京『森の妖精との邂逅』
上辻 愛織『カノコガの羽化』
仁地 悠人『アリに守られたチョウセンアカシジミ』

入賞作品はこちらからご覧下さい。

日本鱗翅学会

〒113-0001
東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。