モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

日本鱗翅学会東海支部 2017年総会及び第166回例会のご案内

2017年11月16日公開

東海支部の「2017年総会及び第166回例会」を下記の要領で開催いたします。会員外の皆様も参加もできますので、お誘い合わせの上ご参加いただければ幸いです。

開催要領

日時
2017年12月2日(土) 13:00~17:00
会場
名城大学 共通講義棟北館 N-104講義室
(名古屋市天白区塩釜口 1-501 | 名古屋地下鉄鶴舞線塩釜口1番出口徒歩5分)
名城大学へのアクセス (名城大学ウェブサイト)
参加費
500円

プログラム

特別講演 13:40~14:40
高橋 昭
 「原色日本蝶類生態図鑑」全4巻作成の頃
一般講演 14:50~16:50
多賀 敏正
 ジャコウアゲハ宮古島亜種の季節的変異について
河本 実
 三重県の蝶について
杉坂 美典
 台湾産の珍蝶10種の発生状況について
服部 和之
 海外蝶採集紀行 ラオス南北 ボーロベン高原とムアンゴイ
中西 元男
 三重県のウラナミアカシジミ紀伊半島“亜種”

※ 例会終了後、懇親会の開催を予定しています。奮ってご参加下さい。

日本鱗翅学会東海支部事務局

〒489-0863

愛知県瀬戸市せいれい町 27

南山大学 総合政策学部

江田 信豊

TEL:0561-89-2000
FAX:0561-89-2099

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鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。