モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

九州支部平成29年春の例会のお知らせ

2017年2月23日公開

この度、九州支部で日本鱗翅学会単独の例会を開催することになりました。これまで日本昆虫学会九州支部との合同大会に参加されたことのない方、高校生など会員外の方の参加も歓迎します。皆様お誘い合わせの上、お気軽にご参加ください。

日時・場所

日時:
2017年3月12日(日) 13:00~17:00
会場:
九州大学農学部1号館307号室
アクセス:
地下鉄貝塚駅より徒歩5分
参加費:
無料

プログラム

  • 末藤 清一: インドネシア、スラウェシ島のチョウ最新事情
  • 山口 諒: メナドヒメワモンの分類学的再検討とスラウェシの生物地理
  • 河野 晃太郎・板並 優佳・佐々木 公隆: 天拝公園とトラストの森の環境調査
  • 佐々木公隆: 福岡県のカトカラの記録
  • (休憩)
  • 屋宜 禎央: 日本産潜葉性小蛾類に関する新知見
  • 千葉 秀幸: 「所族未定」のセセリを仕分ける
  • 二町 一成: キオビエダシャク・イエローバンド型の出現状況について
  • 広渡 俊哉: 「白昼の妖精」ヒゲナガガに関する最近の話題
  • その他の話題

※ 例会終了後、簡単な懇親会の開催を予定しています。

お問い合わせ

〒812-8581 福岡市東区箱崎 6-10-1
九州大学農学部昆虫学教室
Tel: 092-642-2837
e-mail: hirowat_t@agr.kyushu-u.ac.jp

広渡 俊哉 (九州大学農学部)

日本鱗翅学会

〒113-0001
東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。