モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

閉じる

日本鱗翅学会

近畿支部第151回例会開催のご案内

2015年5月 4日公開

※終了しました。

近畿支部第151回例会プログラムが確定いたしましたので、ご案内いたします。14時開始ですが、役員の皆様は13時半からお願いします。 今回は、関東支部の井上孝美さまを招き、ヒサマツミドリシジミの生態について講演していただきます。皆様ふるってご参加ください。会員以外の方のご参加も歓迎します。

日時・場所

日時
2015年5月9日(土)14:00~16:00
会場
I-siteなんば(大阪府立大学)
大阪市浪速区敷津東2丁目1番41
南海なんば第1ビル 2F S1室
地下鉄大国町駅・恵美須町駅より徒歩約7分、なんば駅より徒歩約15分

プログラム

招待講演(14:00~14:30)
「ヒサマツミドリ 生態解明の文化史と♀の繁殖戦略」井上孝美(関東支部)
連絡事項・休憩・I-siteなんば見学 (14:30~15:00)
一般講演(15:00~16:00)
1.「日本産メスハリオガ科Urodidaeについて」那須義次・宮野昭彦
2.「森林に生息する多様な鱗翅類の保護のための野生動物管理」寺本憲之(びわ湖の森の生き物研究会)
3.「博物画による江戸期京都周辺のチョウ相の推定-円山応挙の写生帖の解析-」吉田周
4.「CT撮影によるアサギマダラの飛翔筋と胸部外骨格の構造」平井規央・泉田啓・飯間信・横山直人

※13:30から近畿支部役員会を開催しますので、関係者の方はお集まり下さい。

※終了後に難波周辺で懇親会を予定しています。

お申込・問合せ先

日本鱗翅学会近畿支部
平井 規央
〒599-8531 大阪府堺市中区学園町1-1
大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科
緑地環境科学専攻 環境動物昆虫学研究グループ
Tel:072-254-9413
Fax:072-254-9694
e-mail:n_hirai@envi.osakafu-u.ac.jp

日本鱗翅学会

〒113-0001
東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。