モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

映画:「バタフライ~蝶たちの不思議な大移動~」のご案内

2013年11月 5日公開

日本鱗翅学会推薦映画について以下にご案内いたします。加藤義臣会員が監修・翻訳をされています。

映画名:「バタフライ~蝶たちの不思議な大移動~」

概要:渡り蝶として有名なオオカバマダラの移動先と集団越冬地を突き止めた、アークハート博士の半生を描いたものです。チョウのマーキング手法や集団越冬地でのロケなど科学的にも映像的にも大変興味深いものです。なお、本映画はもともと3D映画として制作されていますが、日本ではドーム型劇場のみで公開されます。

制作
SK Films
日本語版制作/配給
D&D ピクチャーズ(問い合わせ先)
日本語版ナレーション
はなさん
監修
加藤義臣
翻訳
加藤義臣・原朋子
現時点での上映館と日程
鹿児島市立科学館 (2013年10月1日から12月28日)
さいたま市宇宙劇場((2013年9月7日から12月1日、2014年2月1日から2月23日)

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鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。