モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

日本昆虫科学連合設立記念・日本学術会議公開シンポジウム「新時代の昆虫科学を拓く」

2010年7月 2日公開

※終了しました。

日本鱗翅学会会員の皆様

来たる7月24日(土)に、昆虫関連の研究者が所属する14の学協会の連合体である「日本昆虫科学連合」が設立されます。これを記念してシンポジウムが開催されます。 皆様、奮ってご参加下さるよう、お願い申し上げます。 (昆虫科学に興味があるアマチュア会員も大歓迎です。)

詳細につきましては、日本学術会議ウェブサイト(http://www.scj.go.jp/)および日本昆虫科学連合ウェブサイト(開設準備中)に、後日掲載予定です。

(日本鱗翅学会本部幹事:岩野秀俊)

主催・日時・場所・参加費

主催
日本昆虫科学連合、日本学術会議農学委員会応用昆虫学分科会、 加盟学協会(日本衛生動物学会、日本応用動物昆虫学会、日本家屋害虫学会、 日本環境動物昆虫学会、日本蜘蛛学会、日本昆虫学会、社団法人日本蚕糸学会、 日本ダニ学会、社団法人日本動物学会、社団法人日本農芸化学会、 日本農薬学会、日本比較生理生化学会、日本野蚕学会、日本鱗翅学会)
日時
2010年7月24日(土)13:00-17:20
場所
日本学術会議講堂
参加費
無料

開催趣旨

農学委員会応用昆虫学分科会は、我が国における昆虫科学および関連学問分野の研究・教育の推進とこの分野の社会的な普及を目的に、国内における昆虫科学研究者コミュニティーの構築を目指し、活動してきた。平成21年3月に応用昆虫学分科会の呼び掛けに昆虫科学関連学協会が応えるかたちで準備委員会が組織され、来る平成22年7月に「日本昆虫科学連合」が設立される運びとなった。この連合が、自由で活発な学術情報の交換を可能にし、昆虫科学の一層の発展を支える基盤となることを期待し、設立記念公開シンポジウムを開催する。

次第

開会(13:00)
日本昆虫科学連合設立報告(13:05-13:20)
山下 興亜(中部大学学長、日本学術会議連携会員)
連合の将来展望と学術会議との連携(13:20-13:35)
藤崎 憲治(京都大学大学院農学研究科教授、日本学術会議連携会員)
講演(13:35-17:15)
1)13:35-14:15 昆虫と化学 -「喰う」と「喰われる」の狭間で-
森 直樹(京都大学大学院農学研究科准教授)
2)14:15-14:55 シロアリからエネルギーを創る
吉村 剛(京都大学生存圏研究所准教授)
- 休憩 -
3)15:15-15:55 ハエから学ぶ寄生戦略
舘 卓司(九州大学大学院比較社会文化研究院講師)
4)15:55-16:35 昆虫ウイルスの巧みな宿主制御戦略
勝間 進(東京大学大学院農学生命科学研究科准教授)
5)16:35-17:15 虫とダニの共進化関係と多様性
五箇 公一(国立環境研究所主席研究員)
閉会(17:20)

終了後に懇親会(詳細は後日)を予定しています。

問い合わせ先

昆虫科学関連学協会の連合に関する準備委員会(略:昆虫連合準備委員会)
幹事:日本 典秀(Norihide HINOMOTO)
独立行政法人農業生物資源研究所 昆虫-昆虫・植物間相互作用研究ユニット
〒305-8634 茨城県つくば市大わし1-2
Tel:029-838-6077,6289
Fax:6077,6028
E-mail:Junbi-admin@ml.affrc.go.jp

日本鱗翅学会

〒113-0001
東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。