モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

近畿支部第140回例会・シンポジウムのご案内

2010年4月18日公開

※終了しました。

下記のとおり第140回例会・シンポジウムを開催しますので、多数の方のご参加をお願い申し上げます。 会員以外の方のご参加も歓迎します。

日時・場所

日時
2010年5月8日(土)13:00-17:00
会場
大阪市立自然史博物館 講堂
(長居公園:長居東バス停近くの南側通用口から入場してください。)
参加費
例会・シンポジウム参加費:無料
(展示をご覧になる方は、花と緑と自然の情報センターから入館料を払って入場してください)
懇親会
例会終了後に懇親会を開催します。参加ご希望の方は5月5日までに伊藤までご連絡ください。
会費4,000円の予定。

プログラム

講演題目
中国湖南省で発見されたホソガ科オビギンホソガ亜科の新種
○小林茂樹・広渡俊哉(大阪府大院・昆虫)・黄 国華(湖南農大)
滋賀県の蚕糸業の推移
寺本憲之(びわ湖の森の生き物研究会)
ツゲノメイガ、アゲハモドキ、ナガサキアゲハ幼虫の日周活動性
○竹内啓一(大阪府立大学)・金沢 至(大阪市立自然史博物館)
ハヤシミドリシジミのタイプ産地Pung-Tungの位置判明の経緯
松田真平(大阪府)
蝶の翅の銀色斑紋部の構造と光学特性
棚橋一郎(大阪工業大学・工学部)
兵庫県宝塚市武庫川におけるアサギマダラの調査
渡辺康之(NRC)
公開シンポジウム
四国東部におけるアサギマダラの移動調査-徳島県を中心に
大原賢二(徳島県立博物館)
海を渡って長距離移動するチョウとガ
吉松慎一(農業環境技術研究所)
2009年のアサギマダラの調査成果報告
金沢 至(大阪市立自然史博物館)
総合討論

お問い合わせ先

日本鱗翅学会近畿支部幹事長 伊藤ふくお
〒639-0201 奈良県北葛城郡上牧町片岡台3丁目1-25-101
TEL:0745-51-7626
FAX:0745-51-7627
e-mail:para-sita2@kdt.biglobe.ne.jp

日本鱗翅学会

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東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。