モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

日本鱗翅学会アサギマダラプロジェクト公開シンポジウム

2010年3月19日公開

※終了しました。

本年度第1回のアサギマダラプロジェクト公開シンポジウムを下記のように開催することになりました。皆様のお越しを心からお待ちしております。

日時・会場など

日時
2010年5月8日(土)15:00-17:00
会場
大阪市立自然史博物館講堂(南側の通用口から入ってください)
主催
日本鱗翅学会
共催
日本鱗翅学会近畿支部・大阪市立自然史博物館・渡りチョウを調べる会
参加費
無料(博物館の展示をご覧になる方は入館料が必要です)

プログラム

1.特別講演1:四国東部におけるアサギマダラの移動調査-徳島県を中心に
大原賢二(徳島県立博物館)
2.特別講演2 海を渡って長距離移動するチョウとガ
吉松慎一(農業環境技術研究所)
3.2009年のアサギマダラの調査成果報告
金沢 至(大阪自然史博物館)

その他

日本鱗翅学会の会員以外の方も参加できます。当日、同じ会場で13:00-15:00まで、日本鱗翅学会近畿支部と渡りチョウを調べる会の合同例会が行われます。アサギマダラについての一般講演も行われる予定ですので、関心のある方は、こちらへも是非ご参加ください(非会員の方も参加できます)。
公開シンポジウム終了後に、懇親会も予定しています(会場・参加料は未定です)。

お問い合わせ

公開シンポジウムについて
渡りチョウを調べる会事務局
石井 実 072-254-9413(大阪府立大学昆虫学研究室)
会場について
大阪市立自然史博物館
金沢 至 06-6697-6221

日本鱗翅学会

〒113-0001
東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。