モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

第5回 里山保全特別講演会・公開シンポジウム 『里山の蝶と蛾を守る』

2008年10月 5日公開

※終了しました。

昆虫の宝庫であった里山が変貌しています。種々の要因が里山の生き物に複合的に影響し、身近にいたはずの昆虫が徐々に姿を消しているのです。その実態をさぐる講演会を開催します。この講演会では、近年始まったばかりの京阪神地区のガの生息調査や、保全に向けての活動についてまず報告していただきます。そして、これまで総括的に紹介されることが少なかった紀伊半島のチョウ相やその変化、近畿地方におけるチョウの生息状況、および各府県において保全することが望まれる重要なチョウについての報告を受けます。また、身近なチョウやガの保全に関しての意見交換も行いたいと考えています。

日時
10月5日(日)午後1時から午後5時
会場
大阪市立自然史博物館講堂(南側通用口より入場下さい)
参加費
無料(ただし展示を見る場合には博物館入館料が必要)
主催
日本鱗翅学会近畿支部・大阪市立自然史博物館
内容
1.近畿地方における蛾の現状報告(木下總一郎)
2.紀伊半島における蝶の現状報告:奈良県(伊藤ふくお)、和歌山県(諏訪隆司)、三重県(中西元男)
3.各府県において保全が必要な種や地域:福井県(三上秀彦)、滋賀県(南尊演)、京都府(小野克己)、大阪府(森地重博)、兵庫県(近藤伸一)など
4.総合討論

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鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。