モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

公開シンポジウム「アサギマダラ移動調査の30年と今後の展望」開催のお知らせ

2007年8月11日公開

※終了しました。

日本鱗翅学会アサギマダラプロジェクトでは、公開シンポジウム「アサギマダラ移動調査の30年と今後の展望」を開催します。 台湾のアサギマダラやマダラチョウ類に関する講演もありますので、多数のご参加をお待ちしております。

主催・共催

主催
日本鱗翅学会アサギマダラプロジェクト
共催
大阪市立自然史博物館・アサギマダラを調べる会

日時・場所

日時
2007年8月11日(土)13:00-16:30
会場
大阪市立自然史博物館講堂
参加
無料。ただし、大阪市立自然史博物館の展示をご覧になる方は、博物館入館料が必要です。
シンポジウムのみに参加される方は、博物館南側通用口からの入場となります。

プログラム

12:30
受付開始
13:00
開会の挨拶
13:05
写真で見るアサギマダラの生態:宮武頼夫
13:30
基調講演「アサギマダラ移動調査の30年」福田晴夫
14:00
Bionomics of the Chestnut Tiger, Parantica sita niponica (Lepidoptera:Nymphalidae: Danainae) in Nanao (Yilan County)
台湾宜蘭市南澳におけるアサギマダラの生活史:李 信徳
14:30
日本周辺におけるアサギマダラの北上移動:金沢 至
15:00
Monitoring the moves of Danaidae at Tatachia Area in Yushan National park
台湾玉山國家公園の塔塔加地區におけるマダラチョウ類の移動のモニタリング:陳 建志
15:30
アサギマダラの移動の意義と保全:藤井 恒
16:00
パネルディスカッション「アサギマダラ調査の今後」
パネラー:福田晴夫・藤井 恒・金沢 至・宮武頼夫・中西元男・李 信徳 ほか
16:25
閉会挨拶
懇親会
終了後の18:00から長居球技場レストラン(2階)で行われます。会費4000円。

お問い合わせ先

シンポジウムの内容などについて
藤井 恒(pen@japan-inter.net)
懇親会の申込み、および会場について
金沢 至(kana@mus-nh.city.osaka.jp、TEL06-6697-6221)

なお、翌日(8月12日)には、滋賀県大津市びわ湖バレイでアサギマダラのマーキング会が予定されています。

日本鱗翅学会

〒113-0001
東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。