モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

関東支部「秋のつどい」2006年

2006年10月21日公開

※終了しました。

関東支部恒例の「秋のつどい」を下記の要領で開催いたします。今回は栃木県の「昆虫愛好会」との共催です。 皆様、どうかお気軽にご参加ください。会員でなくても参加できますのでご興味のある方にも声をかけて下さい。

日時
2006年10月21日(土)13:00-17:00(開場12:30)
会場
モンベルクラブ渋谷店Mont・bell5階サロン
(場所は渋谷の東急ハンズの向いにあるお店(アウトドアショップ)の5階です。)
住所:
京都渋谷区宇田川町11-5モンベル渋谷ビル
電話:03-5784-4005
参加費
1,000円(会場費・講演要旨代を含む)
懇親会
会費4,000円Mont・bell5階サロン (同じ会場です)

プログラム

一般講演
瀬田和明「荒川千住新橋緑地の蝶類群集」
松田邦雄「日本の蝶全種撮影の夢」
中臣謙太郎「孵化幼虫はhostの出芽にシンクロできるか」
加藤義臣・宮内 司「神奈川県産」アカボシゴマダラの光周反応
川崎菜実・加藤義臣「石垣島産ジャコウアゲハ(spp. bradanus)における幼虫の成長と生存に対する集合効果
特集:栃木県の鱗翅類
葛谷 健「栃木県の蝶の近況」
長谷川順一「栃木県におけるアサギマダラの発生状況」
中村和夫「フェントンの関東旅行と蝶発見」
お問い合わせ
瀬田和明
〒120-8510 足立区中央本町1-17-1
足立区役所公園緑地課
電話:03-3880-5896
企画・運営
日本鱗翅学会関東支部幹事会
担当評議員
石川和宏・大塚市郎・倉地正・瀬田和明・中谷貴寿・三橋渡・諸星重明
幹事
宇野彰・栗山定・里中正紀・菅井忠雄・津吹卓・長畑直和・長谷川大・針谷毅・矢後勝也
顧問
岩野秀俊・小堀文彦・矢野高広

日本鱗翅学会

〒113-0001
東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。