モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

八ヶ岳総合博物館 特別展「八ヶ岳の蝶たち(仮称)」への協力(信越支部)

2006年7月26日公開

※終了しました。

信州にはたくさんのチョウたちがくらしています。なかでも八ヶ岳にくらすタカネヒカゲやミヤマシロチョウは、従来の天然記念物としての保護に加え、 新たに長野県希少野生動植物保護条例でも、保護されようとしています。

このように保護の気運の高まるなか、長野県に生息しているチョウ約150種を八ヶ岳や霧ヶ峰を中心に、 標本、写真やビデオフィルム、パネルなど様々な方法でその紹介します。 また、「チョウとガの違い」「渡りをするチョウ」「少なくなってしまったチョウ」などの改めてチョウを知るコーナーも作り、 チョウに対する理解を進める展示会ともします。

なお、期間中には、講演会や自然観察会も開催します。さらに、展示会の始まる前からも、展示会を盛り上げる意味で自然観察会を開催します。

平成18年度 特別展「八ヶ岳の蝶たち(仮称)」

主催
八ケ岳総合博物館
協力
日本鱗翅学会、松本むしの会
期間
2006年年7月26日(水)から10月1日(日)
関連イベント「チョウの舞う庭づくり~バタフライガーデン~」
7月29日(土)午後1時30分から
講師:日本鱗翅学会理事 田下昌志さん
講演会「八ヶ岳の蝶たち」
9月10日(日)午後1時30分から
講師:長野県自然観察インストラクター 浜栄一さん
自然観察会
プレイベント「ヒメギフチョウ」5月3日(水)
プレイベント「ミドリシジミ」6月25日(日)
プレイベント「ミヤマシロチョウ」7月22日(土)
プレイベント「ベニヒカゲ」8月5日(土)
プレイベント「アサギマダラ」9月3日(日)
展示解説
8月1日(火)・8月26日(土)
問合せ先:大谷勝己 (Katumi Otani)
八ヶ岳総合博物館 〒391-0213 長野県茅野市豊平6983
TEL:0266-73-0300
FAX:0266-72-6119

日本鱗翅学会

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鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。