モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

日本鱗翅学会東海支部2005年総会兼第130回例会のご案内

2005年12月 3日公開

《一般参加歓迎》

※終了しました。

日時
2005年12月3日(土)13:00-17:00
場所
名城大学タワー75:15Fレセプションホール
名古屋市天白区塩釜口1-501
Tel. 052-832-1151(代表)
名古屋地下鉄鶴舞線塩釜口1番出口徒歩5分
参加費
500円

特別講演:本田計一氏「チョウの食草選び-母と子と植物の言い分」

プロフィール
京都大学工学部大学院終了後鐘紡(株)研究所勤務。現在広島大学総合科学部教授(理学博士)で、米国コーネル大学生態進化生物学科の客員教授を歴任。 研究テーマ:鱗翅目昆虫の寄主選択・化学防御・採餌・配偶・休眠などについての化学生態学、生理化学。

一般講演
西原かよ子:「矢田川河川敷の鱗翅類」
波平和也:「温度変化によるナガサキアゲハのメスの白紋の出現状況」
高橋真弓:「東シベリア・マンモスの国のチョウと自然」
間野隆裕:「豊田市都心部において糖蜜で誘引されたガ類群集」

標本展示や文献等の閲覧販売もいたします。お持ち下さい。

当日終了後その場で楽しい懇親会を実施します。

事務局
間野隆裕 海部郡美和町蜂須賀花木前1-33 〒490-1225
TEL(FAX).052-442-1503
e-mail:manotaka@muj.biglobe.ne.jp

日本鱗翅学会

〒113-0001
東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
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鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。