モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

第130回日本鱗翅学会近畿支部例会のご案内

2005年5月22日公開

※終了しました。

下記のとおり第130回例会を開催しますので、多数の方のご参加をお願い申し上げます。会員以外の方のご参加も歓迎します。

日時
2005年5月22日(日)13:30-17:00
会場
大阪市立自然史博物館(長居公園内;裏門から入場してください)
懇親会
例会終了後に懇親会を開催します。会費は5,000円です。

講演題目:(12:30から役員会を開催します)

1. 滋賀県版レッドデータブック鱗翅類の改訂について
南 尊演(滋賀県立八幡高等学校)
2.チョウ類の生物多様性保全をめぐる環境省等の動向-外来生物法の施行、RDBの第2次見直し、自然公園法の改正など-
石井 実(大阪府大・生命環境)
3.大台ヶ原のガ類群集を利用した森林環境評価
立岩邦敏 他(大阪府大)
4.挺水植物を寄主とする蛾類
吉安 裕(京都府大)
5.幼虫がタデ科植物に潜るツヤコガ
李 峰雨・広渡俊哉(大阪府大)、黒子 浩(阪南市)
6.ブナ科植物寄主とする不思議な形態を有する幼虫
寺本憲之(滋賀県)

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鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。