モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

東海支部2004年総会兼第127回例会のご案内

2004年12月 4日公開

非会員参加大歓迎

日時
2004年12月4日(土)13:00-17:00
場所
名城大学9号館402号室
名古屋市天白区塩釜口1-501 TEL052-832-1151(代表)
名古屋地下鉄鶴舞線塩釜口1番出口徒歩5分
参加費
500円
特別講演
「チョウの構造色の仕組み
-モルフォチョウと国内産のチョウ-」
木下修一氏 大阪大学大学院生命機能研究科教授

木下先生は東京大学卒業後大阪大学、北海道大学教官を経て現職になられました。レーザー分光学、非平衡物理学、構造色の研究をされ、 2004年第7回ロレアル色の科学と芸術賞金賞を受賞されておられます。モルフォチョウの輝く青色(構造色)の発色の仕組みや国内産蝶について、 電子顕微鏡観察、光学測定などから、その発色の仕組みを明らかにしていただきます。

一般講演
高橋真弓:ミヤマシジミに関する諸問題 -日本産ミヤマシジミは固有種(新種)か!?-
間野隆裕:蝶と環境評価-豊田市の事例から-
福住和也:中部地方のキリガの採集と周年発生

標本展示や文献等の閲覧販売もいたします。お持ち下さい。

当日終了後素晴らしいグッズの当たる楽しい懇親会(3000円+飲み代)を実施します。参加希望者は当日受付で。

東海支部事務局:間野隆裕
TEL(FAX). 052-442-1503
愛知県海部郡美和町大字蜂須賀字花木前1-33
e-mail:manotaka@muj.biglobe.ne.jp

日本鱗翅学会

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鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。