モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

第51回日本鱗翅学会大会のご案内

2004年11月 7日公開

第51回日本鱗翅学会大会のご案内 -7日は白水隆博士の追悼行事を行います-

第51回日本鱗翅学会大会は、中国支部が担当して島根県松江市で開催します。去る4月2日、名誉会長 白水隆博士が急逝されました。本大会では白水博士を追悼するシンポジウムを企画いたしました。ぜひ、皆様お出かけいただきますようご案内申しあげます。

講演プログラムはこちらをクリック

※このページは非会員の方々用のご案内です。会員の方は会員向けのイベント詳細ページ(パスワードが必要です)をご覧ください。

1.会場
島根大学・大学会館(松江市西川津町1060島根大学内)地図参照
懇親会(サンラポーむらくも、松江市殿町)
2.日程
2004年11月6日(土)12時30分~11月7日(日)15時30分
スケジュール表を追加しました。
11月6日
一般講演(13:00~14:45, 15:15~16:30)2会場
ポスター発表(13:00~16:30, 質問の時間は14:45~15:15)
記念撮影(16:30~17:00)
懇親会(18:00~20:00)
11月7日
総会(9:30~10:00)
白水隆名誉会長の追悼シンポジウム(10:00~15:30)
※昼休みの時間に自然保護委員会を公開で行います。
3.会費・参加申し込み
学会当日に受付にて非会員であることを伝えて参加費2000円をお支払いください。 懇親会への参加も可能です(会費8000円)。
4.交通
JR利用の方は、新幹線で岡山、伯備線を経由して松江駅が便利です。 東京方面からは寝台列車もあります。航空便利用の方は、出雲空港・米子空港が利用できます。 東京・大阪からは一日5~6便、名古屋・福岡からは2便あります。高速夜行バスも東京、大阪、京都、岡山、広島、福岡などから出ています。 なお、大会会場への車の乗り入れはできません。
5.大会事務局
大会会長: 淀江賢一郎
事務局長: 林 成多 (0853) 63-7111, FAX(0853)63-7112(ホシザキグリーン財団)
星川和夫 (0852) 32-6527(島根大学生物資源科学部環境生物学講座)
中薗洋行(同上)
この大会に関するすべてのお問い合わせは、林事務局長までご連絡ください。
6.その他
弁当の斡旋はいたしません。大学生協の食堂が利用できる見込みです。

白水隆名誉会長追悼行事のご案内

大会2日目は白水博士の追悼行事を行います。

日時
2004年11月7日(日)10:00-12:00、13:00-15:30
会場
島根大学・大学会館
進行役
星川和夫(島根大学生物資源科学部)
内容
高橋真弓会長の挨拶
矢田 脩さん「蝶の分類学・系統学への貢献」
朝日純一さん「蝶の生物地理」(仮題)
難波通孝さん「蝶の保護活動(ギフチョウとウスイロヒョウモンモドキ)」
森中定治さん「カザリシロチョウのもつ遺伝子の特性と進化過程への考察」
福田晴夫さん「白水先生と日本の迷蝶」
小岩屋敏さん「ゼフィルスにおける♂前脚ふ節の形状の違い(分節・癒合)を、どう評価するべきか」
工藤忠さん「アリとの間に特殊な関係を有するシジミチョウ数種の生態について」
三枝豊平さん「白水蝶学とは何か」

講演は各30分です。演者のみなさまにはそれぞれ白水先生から影響を受けたことや発表に関わる思い出話についてもお話しいただく予定です。

日本鱗翅学会

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※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。