モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

東海支部2002年総会兼第121回例会

2002年12月 7日公開

*終了しました。

日本鱗翅学会東海支部では、2002年総会兼第121回例会を開催します。 この日は、蝶類学会の忘年会と重なるようですが、東京へ行けない方はぜひ、名古屋へお越しください。 今回は、化学生態学の分野で世界的に御活躍の西田律夫氏をお招きして 鱗翅目昆虫の産卵刺激成分、化学防御システム、性フェロモンなど、 盛りだくさんな内容について、お話しいただきます。 質問時間も多めに取る予定ですので、ぜひ議論にご参加ください。 会員の皆様の標本展示、調査報告書などの文献交換・販売も予定します。 この催し物は、チョウやガに関心のある方なら、どなたでも参加できます。多数の皆様のご来場を心よりお待ちしております。

日時
2002年12月7日(土)13時-17時
総 会(13:00-13:30)
休 憩(13:30-14:00)
特別講演(14:00-15:30)
『チョウとガの生活史と植物成分』西田律夫(京都大学大学院応用生命科学専攻)
1.アゲハチョウはなぜミカンの葉に産卵するのか?
2.毒草を好むチョウとガ(ジャコウアゲハ/マダラチョウ/ヒョウモンエダシャクなど)
3.オオゴマダラの求愛とフェロモン
一般講演(15:50-17:00)
中村康弘 :ヒョウモンモドキの保全
間野隆裕 :豊田市都心部のチョウ類群集
西原かよ子:マダラガよもやま話
懇親会(18:00から)
会場:栄華楼(名古屋市昭和区妙見町44 Tel:052-832-8655)
会費:4000円ぐらい
昆虫グッズ等の無料抽選会もありますので、用品等をお持ち下さい。
会場
名城大学9号館402号室
名古屋市天白区塩釜口1-501
Tel:052-832-1151(代表)
交通
名古屋地下鉄鶴舞線 塩釜口1番出口より徒歩5分
会費
500円
事務局
鱗翅学会東海支部
E-mail:manotaka@muj.biglobe.ne.jp
間野隆裕

日本鱗翅学会

〒113-0001
東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。