モンキチョウ Colias erate poliographus
(シロチョウ科モンキチョウ亜科)

モンキチョウは平地から亜高山帯まで、日本各地に広く分布する普通種である。早春から晩秋にかけて、公園や堤防などの開けた環境を活発に飛び回る成虫の姿がしばしば見られるが、いざ採集しようとすると意外に素早く、子どもが持つ網ではなかなか捕らえられない。

観察を続けていると、写真のように雌雄が並んでホバリングする場面に出会うことがある。モンキチョウの♂は常に黄色で、♀には黄色型と白色型が存在するため、写真では左が♀、右が♂である。多くの蝶類と同様に、モンキチョウでも♂は♀を求めて飛び回り、発見すると一目散に追尾する。野外で見られる♀の多くはすでに交尾を済ませており、そのため♂の求愛行動は大半が失敗に終わるが、♀が即座に拒否行動を示さない場合には、このような空中での追尾がしばらく継続することがある。

このとき、雌雄の位置関係をよく観察すると興味深い点に気づく。追尾しているはずの♂が、実際には♀の前方を飛んでいるのである。これは、♂の翅表(種によって分泌器官の位置は異なる)から揮発性の化学物質が放出されており、それが性フェロモン(同種の個体間で交信を行うために用いられる化学物質)として作用し、♀にその香りを嗅がせているためと考えられている。

チョウの性フェロモンに関する研究は、ガに比べて進展が遅れており、その機能は未解明な点が多いが、どうやら♀の警戒心を和らげ、♂の求愛を受け入れやすくする役割があるとされている。

撮影データ: 2023年6月20日 鳥取県鳥取市・湖山池公園
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

関東支部「春の集い」2002年

2002年3月24日公開

採集に出かけたくてウズウズすると同時に、鼻がムズムズする季節となりました。 ソルトレイクのオリンピックはさまざまな問題を提議して終わりましたが、「春の集い」は蝶蛾シーズンの開会式です。 花粉症の方もそうでない方も、「春の集い」でスッキリと好スタートを切りましょう!

日時
2002年3月24日(日) 13:00-17:00(開場12:30)
会場
清水学園8階記念ホール
(渋谷駅より徒歩5分 表参道駅より徒歩8分)
参加費
1,000円(会場費・要旨代を含む)
懇親会
立食形式 4,000円
プログラム
橋本 健一
 北海道に侵入したオオモンシロチョウの光周反応と休眠消去に及ぼす低温の効果
美ノ谷 憲久・岩野秀俊
 相模湾沿岸域におけるムラサキツバメの動向
津吹 卓・瀬田和明
 温室内におけるカバタテハの睡眠に関する活動と環境条件
加藤 義臣
 ヒメシロモンドクガの光周反応
松井 安俊・松井英子
 ムラサキシジミ、ウラギンシジミの越冬を考える
新川 勉
 モンシロチョウグループの分子系統分析 2
佐伯 晃・野村 昌史・大和田 守
 翅の白色度合からみた日本産オキナワルリチラシの類縁関係
中臣 謙太郎
 ハンノキに固有な昆虫4種の季節による"すみわけ"
企画・運営
日本鱗翅学会関東支部幹事会
担当評議員
岩野 秀俊・矢野 高広・仁坂 吉伸・倉地 正・三橋 渡・大塚 市郎・瀬田 和明・小堀 文彦
幹事
石川 和宏・利根川 雅実・長畑 直和・諸星 重明

日本鱗翅学会関東支部幹事会

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鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。