カバイロシジミ Glaucopsyche lycormas
(シジミチョウ科)

日本では、青森県の北端部と北海道のみに分布する稀なシジミチョウ。クサフジを食餌植物とする集団とヒロハノクサフジを食餌植物とする集団とに2分される。特に後者は道南と青森県の限られた地域に見られ、その生息地は海岸部の断崖付近に限定される。

本種の生活史はクサフジとヒロハノクサフジの花に依存しているが、ヒロハノクサフジはクサフジより遥かに花期が長く、そのためヒロハノクサフジを利用する道南・青森県の集団では羽化時期が長期にわたる。例えば青森県の津軽半島では5月下旬から8月まで新鮮な成虫が見られ、年1化でありながら成虫出現期が極めて長い。

このように羽化が斉一でない事情が影響してか、津軽半島の生息地で一度に見られる個体数は少ない。日差しを遮るものがない炎天の海岸で、しかも足場の悪い断崖近くを活発に飛んで落ち着かず、撮影には難儀させられる。

撮影データ: 2013年8月7日 青森県津軽半島
撮影・文章: 工藤 誠也

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日本鱗翅学会

会長あいさつ ~日本鱗翅学会へようこそ~

2016年~2018年度会長 岩野 秀俊

今期(2016年~2018年度)の会長を務めます岩野秀俊です。

私は、東京の下町で生まれ育ちましたが、小学校の頃から近くの空き地でチョウやトンボを追い回して過ごしていました。高校1年生の夏合宿で、生物部の先輩らと福島県の磐梯山に行った時に、先輩から「ゲイシャが飛んでいる!」と言われ、始めてクジャクチョウと出会って以来、美しいチョウの翅に魅了され、チョウたちとの長い付き合いが始まりました。 そのきっかけはともあれ、世界にはチョウやガの仲間(鱗翅類)に関心を持ち、関わり続けている人たちがいます。新種のガを求めて熱帯の密林に分け入る人がいるかと思えば、身近な里山でチョウの生活史を調べている人もいます。また、大学などの研究機関でDNAを解析してチョウやガのたどってきた進化の歴史を明らかにしようという研究者もいれば、農作物の害虫になっているガの防除研究に取り組んでいる農業機関の研究員もいます。現在、鱗翅類は日本から約6千種、世界から約14万種が知られていますが、この仲間の種の多様性や個々の種の生態などは、プロ・アマチュアを問わず、チョウやガに関心を持つ多くの人たちの熱意と努力によって解明されてきたのです。

日本鱗翅学会は、チョウやガに関心を持つ研究者や愛好家の集まりです。本会は第二次世界大戦の終戦直後の混乱期(1945年9月)に、チョウとガの愛好家が集まって誕生しました。本会の大きな特徴はアマチュアを主体とすることで、少数派のプロの研究者と力を合わせて、これまで70年以上にわたり日本および世界の鱗翅類の分類や生態などに関する基礎科学分野の発展に貢献してきました。学術論文を掲載する会報「蝶と蛾」、チョウやガの最新情報を紹介する第2会誌「やどりが」は、それぞれ年4回発行され、2015年度までに前者は66巻、後者は247号を数えます。最近では、市民に公開する「自然保護セミナー」を開催し、「日本産チョウ類の衰亡と保護」を発行するなど、鱗翅類、とくにチョウ類の保全に関する活動もさかんに行っています。

大好きなチョウやガの調査や研究、観察を楽しみながら、世界の鱗翅学の発展に寄与するというのが本会のスタンスですが、そのために、会員が集い、新しい知見を報告しあうとともに相互の親睦を深める機会を大切にしています。全国大会は毎年、夏から秋に1回、9地区(支部)のローテーションで開催されます。各地区は、例会ばかりでなく観察会や調査会なども催し、若手の育成にも力を入れています。また、市民や他の団体などとともに、アサギマダラの移動生態について全国規模で調査する「アサギマダラ・プロジェクト」にも、公開シンポジウムや調査会などの企画があり、本会が世話役を務めています。

本会は、学生や女性を含む約1,100名の会員が所属する日本最大のチョウやガの研究者・愛好者の集まりです。チョウやガに興味を持っている皆さん、ぜひ私たちの仲間に入りませんか?初心者や中高生でも、先輩の会員たちが親切に指導します。また、30歳以下の若手会員の会費は半額とする優遇制度も設けてあります。会員一同、皆さんのご入会を心より歓迎します。

2016年1月 日本鱗翅学会 会長 岩野 秀俊 (日本大学生物資源科学部 教授)

日本鱗翅学会

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※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。