マエアカスカシノメイガ Palpita nigropunctalis
(ツトガ科ヒゲナガノメイガ亜科)

夏の暑さが過ぎ、本格的な秋の訪れを感じはじめる9月の早朝に、アベリアの花を訪れたマエアカスカシノメイガを見つけた。

半透明の白い翅と橙色の差し色が美しいガで、早春のまだ寒い時期から灯火やコンビニの灯りに成虫が集まる。幼虫が公園の生け垣や人家に植栽されるネズミモチやライラック、オリーブなど様々なモクセイ科植物を餌としているため、都市から山間部まで広い地域で成虫を目にする。

本種の成虫は真冬以外いつでも見られるような気がするのだが、実は複雑な生活史を持っており、成虫が見られる時期は意外に限られている。幼虫が暑さにも寒さにも弱いのか、あるいは春と秋だけ餌の状態がよいのか、幼虫の生育に適さない時期を休眠してやり過ごすようだ。夏は成虫で、冬は蛹でそれぞれ休眠するらしい(Gotoh et al. 2011, 後藤 2012)。

撮影データ: 2022年9月23日 鳥取県鳥取市
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

会長就任のご挨拶

2022年~2024年度会長 渡邊 通人

この度、日本鱗翅学会の会長に選ばれました渡邊通人(わたなべみちひと)と申します。多くの方々から「えー!渡邊さんが会長ですか」といわれましたが、取り柄といえば、高校2年生の時に当時九州大学におられて手紙で細かなことまで教えていただいた白水隆先生に勧められて入会しましたので、会員になって52年が経過しようとしていることぐらいかもしれません。しかし、高校生の頃から静岡の高橋真弓先生や北条篤史さん、大学生になってからは鹿児島の福田晴夫先生やタカオゼミナールの皆様(牧林 功・木暮 翠・岩野秀俊各氏など)といった多くの日本鱗翅学会の先輩方に恵まれ育てて頂けたことが、50年以上続けられてきた大きな要因だと思っています。

チョウに興味を持ち始めたのは、富士山で初めて見たキベリタテハの印象がとても強烈だったことです。小学校5年生位だったと思いますが、富士山の二合目付近で当時名前もわからなかった「チョコレート色の地に青が散りばめられ、クリーム色の縁取りのある綺麗なチョウ」に出会ってしまったことがきっかけでした。まさに運命的な出会いといえましょう。ちょうどその頃は夏休みの宿題に昆虫採集が課題として出されていたこともあり、中学生までチョウ採りに夢中でした。そして、中学3年生の夏休みの宿題で提出した自由研究を、当時理科を教えて頂いていた山下高徳先生からまとめてみないかといわれ、日本学生科学賞の山梨県審査に出品して頂けたことが、自然科学的な見方を学ぶきっかけとなりました。それが、大学4年時の甲州昆虫同好会の設立や、現在も行っている日本の生物多様性ホット・スポット富士山麓での絶滅危惧種の保全生態学的調査に繋がっています。 40才台で評議員に選ばれ2期6年務めさせて頂き、2016年からは理事を仰せつかりましたが、理事の6年間に最も強く記憶に残ったのは会員の平均年齢が2000年末には53.6才だったのが、2018年末には64.4才になり、30才以下の若手会員が35名しかいなかったことでした。

そこで折角会長に選んで頂いたからには、これまでお世話になった沢山の先輩会員への恩返しとして、日本鱗翅学会が今後も安定して発展できるように、皆様と一緒に様々な方策を考え、学生や若手会員を増やして行きたいと思っております。そのためには日本鱗翅学会の活動もより魅力あるものにしなくてはと思っておりますので、この非力な会長に皆様のお力添えをお願いして挨拶とさせて頂きます。

2022年春 日本鱗翅学会 会長 渡邊 通人

日本鱗翅学会

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鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。