ニホンセセリモドキ Hyblaea fortissima
(セセリモドキガ科)

早春の山林で昼間に活動する変わり者のガ。日本(北海道~九州)と朝鮮半島に分布する。その色彩斑紋は名前の通りセセリチョウ、特にミヤマセセリとよく似ている。年1化で夏に羽化するが、新成虫はほとんど活動しないまま休眠して夏~冬をやり過ごし、翌春になってようやく活動を始める。セセリモドキの仲間は、ヤガ科などとはかなりの遠縁で、むしろイカリモンガやマドガなどに近縁とされる。

4月初旬、青森県の南西端に位置する深浦町まで足を伸ばした。ところどころに雪が残る中でフキノトウとキブシの花が咲き、路上ではシータテハが日光浴していた。その傍ら、日当たりの良い斜面に多数のニホンセセリモドキが集まっていた。その場で見られたニホンセセリモドキは全てオスで、後脚の毛束を広げて翅をV字に開く特有の姿勢でとまっていた。

撮影データ: 2016年4月2日 青森県深浦町
撮影・文章: 工藤 誠也

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日本鱗翅学会

大阪府北摂山地(鴻応山一帯)のギフチョウ採集に対する自粛のお願い

2014年5月 5日公開

日本鱗翅学会「歌垣・鴻応山の希少チョウ類保全特別委員会」は、大阪府北部山地・鴻応山一帯のギフチョウに絶滅が危惧されるため、本種(成虫を含む全ステージ)の採集、ならびにミヤコアオイの採取を自粛していただくようお願いすることにしました。

大阪府のギフチョウは、かつては大阪府を取り囲む北摂山地、生駒山地及び大和葛城山・金剛山系に広く分布していました。しかし、1960年代には箕面市や生駒山の個体群が姿を消し、その他の産地でもこの約20年間に絶滅、あるいは個体数の著しい減少が続いています。大阪府北摂山地でも同様であり、数箇所のギフチョウ発生地はいずれも絶滅、または絶滅に近い状態に陥っています。鴻応山一帯のギフチョウは数年前までは安定して発生していましたが、急激に個体数が減少しています。ここの発生地の里山環境やミヤコアオイの生育状態は従来とほとんど変化がないにも関わらず、昨年と一昨年の本委員会による調査で成虫は観察されず、少数の卵が見つかっただけであり、危機的な状況といわざるを得ません。

鴻応山に近い歌垣山周辺では、1980年代までは比較的多数のギフチョウを観察することができ、地元の自然愛好家や本学会員などにより自然環境の復元を中心とした保全活動が行われてきました。しかしながら、2009年以降はギフチョウを観察することができない状態が続いています。

北摂山地におけるギフチョウ減少の要因として考えられることは、植生の遷移進行、温暖化、舗装道路の建設等によるギフチョウやミヤコアオイの生育環境の悪化のほか、近年はシカによる植物の過剰摂食も一因であろうと考えられています。また、鴻応山一帯では、ギフチョウ成虫の発生時期には多数の採集者が集まるため、採集圧も無視できません。

当委員会では、鴻応山一帯のギフチョウが絶滅してしまうことを食い止めるため、地域自治体や土地所有者のご理解とご協力を得て、既に進めているギフチョウやミヤコアオイのモニタリング調査を継続するとともに有効な保全対策に取り組むことになりました。

ギフチョウの採集の自粛が個体数の回復にどの程度の効果が期待できるかは未知数です。しかしながら、発生時期になれば多数の採集者が集まるのは事実ですので、保全活動の一環として採集の自粛をお願いする次第です。

同好者の方々には、当地のギフチョウがこのようなお願いをしなければならない厳しい状況であることをご理解いただき、採集の自粛にご協力をお願いします。

LSJ自然保護委員会歌垣・鴻応山の希少チョウ類保全特別委員会

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鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。