マエアカスカシノメイガ Palpita nigropunctalis
(ツトガ科ヒゲナガノメイガ亜科)

夏の暑さが過ぎ、本格的な秋の訪れを感じはじめる9月の早朝に、アベリアの花を訪れたマエアカスカシノメイガを見つけた。

半透明の白い翅と橙色の差し色が美しいガで、早春のまだ寒い時期から灯火やコンビニの灯りに成虫が集まる。幼虫が公園の生け垣や人家に植栽されるネズミモチやライラック、オリーブなど様々なモクセイ科植物を餌としているため、都市から山間部まで広い地域で成虫を目にする。

本種の成虫は真冬以外いつでも見られるような気がするのだが、実は複雑な生活史を持っており、成虫が見られる時期は意外に限られている。幼虫が暑さにも寒さにも弱いのか、あるいは春と秋だけ餌の状態がよいのか、幼虫の生育に適さない時期を休眠してやり過ごすようだ。夏は成虫で、冬は蛹でそれぞれ休眠するらしい(Gotoh et al. 2011, 後藤 2012)。

撮影データ: 2022年9月23日 鳥取県鳥取市
撮影・文章: 中 秀司

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日本鱗翅学会

東京大学総合研究博物館モバイルミュージアム特別展「蝉類博物館」のお知らせ

2015年9月30日公開

※終了しました。

東京大学総合研究博物館モバイルミュージアム特別展「蝉類博物館」(日本鱗翅学会後援)が開催されますのでお知らせします。

案内ちらし

東京大学総合研究博物館モバイルミュージアム特別展(練馬区立石神井公園ふるさと文化館 平成27年度第1回特別展)「蝉類博物館」─昆虫黄金期を築いた天才・加藤正世博士の世界

会場
練馬区立石神井公園ふるさと文化館
〒177-0041
東京都練馬区石神井町5丁目12番16号
TEL 03-3996-4060
展示期間
2015年10月1日(木)~11月29日(日)9:00~18:00
休館日
月曜日(ただし10月12日(月・祝)11月23日(月・祝)は開館、翌10月13日(火)11月24日(火)は休館)

展示概要

大正から昭和初期にかけて活躍した加藤正世博士(1898~1967年)は、石神井公園に隣接した自宅に加藤昆虫研究所と併設した「蝉類博物館」を開館し、展示を通じた昆虫学の普及とともに、新種・新亜種を含む多くの論文や著書を世に輩出した稀代の昆虫学者です。趣味の昆虫採集を通じた普及活動にも力を注ぎ、たくさんの少年・青年たちに影響を与え、社会現象にもなった昭和初期の昆虫黄金時代を築き上げた主要な人物でもあります。

加藤博士の死後、標本・資料等のコレクションは、長年のご遺族による管理を経て、現在では東京大学総合研究博物館にて大切に保管されています。「蝉類博物館」の閉館以降、これらのコレクションの大々的な展示は成されていませんでしたが、かつて「蝉類博物館」が立地していた石神井の地で、本モバイルミュージアム展として実現しました。

今回の展示では、加藤博士の約5万点の昆虫コレクションから選りすぐりの標本・資料を多数出展しています。セミ、ツノゼミはもちろんのこと、チョウ、ガ、トンボ、クワガタ、コガネムシ、ハチ、アブ、アリ、バッタ、ナナフシ、カメムシ、ガロアムシのような主だった昆虫をはじめ、両生・爬虫類、鳥、クモ、セミタケなど、様々な生き物の標本も見られます。その多くは戦前から戦後にかけての東京近郊で採集されたもので、当時の関東平野の生物相を知る上でも重要な資料となります。また、クマゼミやエゾゼミのホロタイプ標本(新種、新亜種の学名の基準となる標本)は、本展の目玉ともいえる貴重な標本です。その他に加藤博士が残した器具・機材、直筆の描画・資料、著書、虫玩具、写真なども必見です。

これらのコレクションは、東京大学総合研究博物館ならではの展示デザインと映像技術により、一層引き立てられた演出がなされています。まるで加藤博士の時代に舞い戻ったかのような、大正~昭和初期のレトロ調な雰囲気を、再び甦った「蝉類博物館」の標本・資料の中に覚えながら、昆虫学の研究と教育・普及の両面に尽力した加藤博士の世界を体感いただけると幸いです。

主催
東京大学総合研究博物館、練馬区立石神井公園ふるさと文化館(指定管理者 公益財団法人 練馬区文化振興協会)
後援
日本昆虫学会、日本半翅類学会、日本鱗翅学会、日本セミの会
協賛
新日鉄興和不動産株式会社
観覧料
一般300円(200円)/高校・大学生200円(100円)/65歳~74歳150円/中学生以下・75歳以上無料

交通案内

西武池袋線「石神井公園駅」下車 徒歩15分 または 西武バス(荻14)JA東京あおばバス停下車 徒歩5分

練馬区立石神井公園ふるさと文化館

講演会

会場
練馬区立石神井公園ふるさと文化館 多目的会議室
(1)10月11日(日)14:00~15:30「 日本の昆虫文化を築いた加藤正世博士のコレクション」
講師:矢後勝也(東京大学総合研究博物館助教)
(2)10月18日(日)14:00~15:30「 加藤正世と日本の昆虫学」
講師:大野正男(東洋大学名誉教授)
(3)11月7日(土)14:00~15:30「 加藤正世が眺めたカメムシ 昔の東京に想いを馳せる」
講師:石川 忠(東京農業大学助教)
(4)11月15日(日)14:00~15:30「 地図に見る蝉類博物館周辺の今昔」
講師:須田孫七(東京大学総合研究博物館研究事業協力者)
(5)11月22日(日)14:00~15:30「 加藤正世博士が命名した日本のセミ」
講師:林 正美(埼玉大学名誉教授・東京農業大学客員教授)
定員
各100名
参加費
無料
申込方法
9月21日(月・祝)より電話申込受付 03-3996-4060 定員になり次第受付終了

日本鱗翅学会

〒113-0001
東京都文京区白山 1-13-7
アクア白山ビル5F
勝美印刷株式会社内 日本鱗翅学会事務局
※ お問い合わせフォームより御連絡下さい。

鱗翅(りんし)というのは鱗翅目(チョウ目)Lepidopteraのことで、鱗粉のある翅を持った昆虫すなわちチョウやガの仲間です。この小さな生き物はその素晴しい魅力で古い時代から私たちをひきつけてきました。日本鱗翅学会はこのチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しており、興味のある人は誰でも入会できる開かれた学会です。